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応仁の乱に関する歴史小説(池波正太郎『賊将』)と解説書

京の影響を受ける関東


当サイトの記事で何度か書いているとおり、北条早雲の時代、関東の情勢は京都の情勢に強く影響されます。ですから、早雲について調べていると、どうしても京都のことも知りたくなってきます。そして、早雲が活躍する一昔前、京都の情勢に大きな影響を与えた事件といえば、応仁の乱でしょう。


応仁の乱の原因は諸説あり、登場人物は多岐にわたり、しかも名前が似ており、血縁、養子関係も複雑で到底ここで書く気になれません。そこで、応仁の乱を題材にした書籍を紹介することで、早雲前史としての応仁の乱を理解するという目的を間接的に達成したいと思います。


応仁の乱


参考となる歴史解説書


昨年(2009年)、一般読者向けの日本中世史シリーズが発売されました。日本中世史ファンには朗報と言えるでしょう。応仁の乱については、


池 享『戦国大名と一揆 (日本中世の歴史6)』, 2009


で扱われています。


(*)日本中世の歴史6とあるように、この本はシリーズ6冊目であり、最終巻でもあります。


応仁の乱前後の政治史のみならず、社会史にも言及されており、戦国史の本のさわりだけの解説では飽き足らないが、応仁の乱前後の専門書を読む気にはなれない戦国ファンには良書だと思います。


足利義政が主人公の歴史小説~池波正太郎『賊将』~


この歴史解説書を読むと応仁の乱のことは理解できますと言いたいところですが、初学者の場合、おそらく読んでもすぐ忘れて、ゴチャゴチャしていたことだけが記憶に残るでしょう。それは本の完成度の問題ではなく、解説する対象が複雑だからです。しかし、解説書で一応理解したあと、時間を置かず、すぐに歴史小説を読み、主人公とともに間接的に当時を追体験すると理解と記憶が深まります。


応仁の乱を題材にした有名な歴小説は2つあります。



  • 永井 路子『銀の館』

  • 池波正太郎『賊将 改版』


永井さんの本は読んだことがないので、言及しません。
池波さんの『賊将』は6つの短編小説で1冊の本になっており、その第1作目が「応仁の乱」です。短編小説とは言っても、180ページほどあるので、十分読み応えがあります。 司馬遼太郎『箱根の坂』でも、若き早雲の目を通して、応仁の乱前後の京が書かれています。不遇な若き早雲は辛辣に権力者たちを見ており、早雲を通して、司馬さんはバッサリと彼らを斬っていくので読者としては痛快ではありますが、もし自分が当時の支配者層に生まれていたら、どうにかできただろうかという視点で見ると、また違った景色が見えてきます。


あなたならどうする?


その1つのシミュレーションとして、池波さんの「応仁の乱」は参考となると思います。この作品は室町幕府の8代将軍、足利義政が主人公です。義政の父、6代将軍、足利義教は弱体な室町幕府の権威と権力を強めようと奮闘します。


しかし、その行動は有力守護大名からみると、迷惑であり、脅威に他なりません(永享の乱も、彼の強権路線に鎌倉公方、足利持氏(のちの古河公方となる足利成氏の父)が反発したという側面があります)。そういった緊張関係の中で、足利義教は、将軍家と彼に恨みを持つ赤松満祐に謀殺されてしまいます。


将軍である父親が一守護大名に殺害され、早世した兄の後を継いで、義政はわずか14歳で将軍職を継ぎます。現代なら、中学生の年頃ですね。 こういう状況では当然義政に実権があるわけもなく、足利一族の畠山氏や義政の側近が権勢を奮います。本人にすれば、「名ばかり将軍」であって、どうにもならない感があったことは無理なく推測されます。もし実権を取り戻そうと、強引なことをすれば、父のような最期を迎えるかもしれません。それでも放置していてうまくいっていれば、まあよいかもしれませんが、細川氏と山名氏などの有力守護大名間の争い、既存宗教勢力に加え、新興宗教勢力の台頭、土民の蜂起など、混乱は深まるばかりです。そして、義政は現実に絶望して、芸術に逃避します。


この行為が批判の対象となるわけですが、あなたが義政だったら、こういう状況でどうするでしょうか。


応仁の乱


応仁の乱の一局面を描いた関係図 実際には時間の推移と共に複雑怪奇な動きを見せる。

 


イントロはこれくらいにして、あとは池波さんの本に譲ります。彼はさすがに人気作家だけのことはあって、私は最後まで興味深く読みました。義政の絶望とその後の混乱、そして、この混乱を最終的に収めた織田信長という強烈な人物と政権。このラインが見えてくれば、戦国史をより深く、多面的に理解できるのではなかろうかと思います。


資料: 応仁の乱


 

(終)

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