伊東潤と司馬遼太郎が書いた北条早雲の作品
伊東潤さんは主に関東の戦国時代の歴史小説を書います。私はいくつか著書を読んでいますが、クオリティは高いと思います。
私が北条早雲を調べていることもありますが、北条早雲の連作短編集の『疾き雲の如く』は特に面白く、何度も読みました。
北条早雲と言えば、司馬遼太郎『箱根の坂』が有名ですが(『箱根の坂』は私が読んだ司馬作品の3本の指に入るくらい面白いと思います)、『疾き雲の如く』とは切り口が違なるので、比較することは困難です。
デジタル版『黎明に起つ』
その伊東さんがNHK出版から『
黎明に起つ』という連載をはじました。この連載はWebやiPhone/iPad/Androidから読めます。特に課金画面は出てこなかったので、無料で読めるようです。毎月1日に新しいコンテンツがアップロードされるそうです。
少年時代からはじまる構成と大河
第1回を読みましたが、早雲が少年の頃から話がはじまります。出だしは上々、面白くなりそうです。
この作りはNHKの大河を意識しているようにも思えます。また、時系列に物語を進行させるという意味では、司馬さんの『箱根の坂』と比べられるということでもあります(戦国研究の進展の結果、司馬さんの頃の人物像とは相当違いますが)。このことは伊東さんが作家として司馬さんと力量を比較されるということを意味します。
秩序崩壊
もう1つ重要なことは、北条早雲の時代というのは室町体制の崩壊期だったことです。そして、この頃、明応地震という東海の連動型地震とそれによる津波が起きました。その結果、東海を中心とする太平洋側の広域で甚大な被害が出たようです。
Wikipedia:
明応地震
明応地震
早雲は1493年に伊豆に討ち入り、伊豆北部を抑えていたものの、堀越公方の足利茶々丸は伊豆南部を確保しており、そう簡単に早雲の伊豆攻略は完了したわけではありません。明応地震が起こったのは、そういった戦いの最中です。
その時、早雲はどういうふうに考え、どう動いたのでしょうか。この空白をぜひ伊東さんに書いてほしいなと思っています。
早雲の人生が語りかけるもの
こういう自然災害と体制の崩壊期を生き、自ら戦って新しい秩序を作ろうと奮闘した北条早雲という男の人生とその視点は、500年経とうが、実に今日的なのです。
(つづく)
参考情報
この記事を書いた翌日、Twitterで伊東さんから
メンションをいただき、↓の記事を教えてもらいました。興味のある方はぜひ。
・『
黎明に起つに寄せる著者の意気込みを語るブログ記事「
越えねばならない坂がある」